今この文章を書くためにパソコンに向かいタイピングをする度に動悸が段々と大きくなっている事に驚いています。
表現者としてこんなに辛く、書きたくない文章が存在する事を知りませんでした。
頭では分かっているのですが、心がまだ公演延期という事実を受け入れていないのだと思います。
演劇に関わって今年で20年。人生とはまだまだ知らないものばかりだと感じてます。
文章、表現、音楽、演劇、ミュージアム、全ての表現は人を必ず幸せにするものだと
信じて止まないのですが、この状況下の中、演劇をする行為が誰かの幸せや、
健康を害するモノであってはならないと判断し、このような決断を致しました。
まだ演劇は早いだろう。という声も上がってる最中、それでも演劇を前に進めるべく、
東京芸術劇場様と数え切れない程打ち合わせをし、上演許可が降り、
そこからも何度も打ち合わせをして、公演成功を全ての人が信じていた矢先の出来事でした。
私事ですが、今年で演劇20周年を迎えることを記念して、東京芸術劇場で公演を打つ為に5年ぶりに帰ってきました。
今年は演劇を楽しむぞ。と老体に鞭を打って1月から8月まで毎月本番を入れて演劇を楽しみ、
9月には久しぶりにNew York、London、そして初の中東でのお芝居を現地に観に行きたいと考えていました。
ですが、このコロナには演劇の根っこという根っこを、根こそぎ持って行かれました。
『ハイイロノクロ』
この作品は「芸術禁止法案」という法律の下、演劇やライブを謎のウイルスの蔓延によって禁止されている、偶然地球と呼ばれている架空の世界の話でした。
ウイルスで死者が出ることはなくなったが、一度決定した法律を覆す事ができず
「夢」を持つ事ができなくなった若者が、無法者の三人の元バンドマンと、政府御用達の演出家と出会い、小さな田舎町から少しずつ劇場やライブハウスなど、本来表現者が居るべき「場所」を取り返していくというお話でした。
そして、新たなウイルスが蔓延し、その事実にどう立ち向かっていくかを描きたいと思っていました。
しかしその物語の結末のように、現実が私達から「公演」という居場所を奪っていきました。
奇しくも、物語と現実がリンクしてしまったのです。
ですが、その物語の主人公達もそれを乗り越えて自分達の最高のハッピーエンドに向かっていきます。
だから、我々スタッフ、キャストもコレを乗り越えて最高のハッピーエンドに向かっていかなければなりません。
公演を楽しみにしていた皆様には本当に残念ですが、
いつか、必ずこの作品を皆様の前に届けたいと思っております。
そして、最善の努力をして、演劇界の追い風になることが出来ればと考えていたのですが、
本当に残念で仕方ないです。
それでもどうか皆様、演劇を愛してください。
貴方達が居なければ、やはり演劇は成立しないので、これからも応援し続けてくれたら嬉しいです。
最後に一言。
声が枯れるぐらい叫んでいるのを想像して読んでいただいたら嬉しいです。
「あーーーーーーーーーーー、演劇やりたかったな!!!!」
演劇企画ユニット 劇団山本屋
主宰 山本タク